365体育投注_365体育直播-竞猜网投

图片

インタビュー

ホーム > 北大人群像 > 辻 英之さん

NPO法人グリーンウッド自然体験教育センター代表理事 辻 英之さん

誰も知らない土地で
挑戦したいと
雄大な自然に抱かれた
北海道へ

福井県の自然豊かな田舎で生まれ、子どもの頃から山登りや川遊びをして育ったので、北海道の雄大な自然への憧れがありました。また、人生の大きな選択肢において、誰も知らない土地で挑戦してみたいというアウトロー的な気持ちもあったので、同級生たちが東京や大阪、名古屋などへ進学を希望する中、私は北海道大学を目指しました。もともと地元が豪雪地帯だったので、周囲からは「なぜわざわざ北へ行くの!?」と驚かれましたね(笑)

受験当時は今のように豊富な情報がなく、思い描いていた北大は、大平原にぽつんとあるような北海道のイメージそのものでしたが、初めて訪れた時は「札幌がこんなに大都会なんて!」とびっくりしました。そして、都心部の中に広がる自然豊かなキャンパスを見た瞬間にこの北大で学びたいという思いが高まったのを覚えています。

高校時代はスマートな大学生活に憧れていたのですが、当時、北大ではバンカラな風潮が強く、全国各地から入学してきた学生たちの「何かやってやるぞ」という気概が渦巻いていて、とてもワクワクしました。私もその雰囲気に引っ張られ、ハンドボール部に入部し、スマートとは縁遠いバリバリの体育会系に。北海道では1、2位を争う強豪チームで切磋琢磨し、全日本インカレに2度も出場できたことは今でも誇りに思っています。部活の合い間にはアルバイトに精を出し、400㏄のバイクを買い、山や湿原、湖沼、岬など北海道内のあらゆる自然景勝地を巡りました。釧路や知床へ日帰りで行くという強行スケジュールも。

また、ニーチェにのめり込んでいるような体育会系以外の友人たちにも恵まれ、大学時代だからこその出会いも宝物だったと感じています。

自然体験
プログラムを行う
長野県の教育団体の
スタッフに

卒業後の進路を考え始めたのは大学3年の時。北海道の自然と触れ合う中で、知床ナショナルトラスト運動などの自然保護活動に興味を抱いたのですが、その最前線に自ら立つよりも、自然を大切にする人の心を育てる方が自分には合っているかもしれないと、教員を目指そうと思ったのです。でも、大学では部活動に熱中するあまり、学業が疎かになっていたので、教員になる前にもっと教育をしっかり学ぼうと考えていたところ、たまたま書店で見かけたアウトドア雑誌に長野県南部の泰阜村にある当時任意団体だったグリーンウッド遊学センター(現NPO法人グリーンウッド自然体験教育センター)の小さな記事が目に留まって興味が湧き、さっそく福井に帰省する途中に立ち寄りました。山村の豊かな自然環境を活用した自然体験教育に強く感銘を受け、「進むべき道はこれだ!」と確信しました。札幌に戻り、「大学を中退して、今すぐにでも働きたい」という思いを綴り、手紙を送ったのですが、「そんな中途半端な人間はいらない。しっかり卒業してから出直しなさい」と前代表から叱咤されまして。今振り返ると、若気の至りというか…。あの時、一喝していただいたおかげで、無事に卒業できたと本当に感謝しています。

グリーンウッド自然体験教育センターでは、泰阜村の自然を舞台に、村の人々が自然と向き合い暮らしてきた営みを“教育の材”として次世代に伝えていこうという活動をしています。おもに都会の子供を1年間預かり、地元の小?中学校に通ってもらい、寝食を共にする教育プログラム。いわゆる国内留学です。1年間参加の決断が厳しい人たちのために、同時に3日~1週間ほどの短期間の「山賊キャンプ」も実施しており、毎年約1,000人の子どもたちと、ボランティアの大学生約300人がこの村にやってきます。これが大人気で、質?規模?実績ともに全国トップレベルの体験プログラムだと自負しています。子どもの頃に1年間だけでも違う環境で違う地域の子どもたちと触れ合い、学び、さまざまな困難が待ち受けているこれからの時代に“生き抜く力”を学んでもらう。それがこの教育プログラムの目指すところで、“生き抜く力”をしっかりと培った子どもたちを数多く輩出していると思います。

昔から「同じ釜の飯を食う」と言いますが、これは真実でホントに子ども同士が仲良くなるんですよね。その様子を見続けてきたので、この教育プログラムを国際交流に活用できないか検討し、今では年に一度、モンゴル、中国、韓国、北朝鮮、ロシア、日本でアジア版の山賊キャンプをボランティアで開催しています。大人は手を繋げない国でも、子どもたちは仲良くなれるし、友達がいる国とは戦争をしない。そんなシンプルな思いを込めています。この小さな村からスタートした活動がアジアに広がっている結果は、大きな足跡だと実感しています。

逆境を生き抜く力を
育てるために
子どもの力を
信じることを貫き通す

グリーンウッド自然体験教育センターが根幹としている“ねっこ教育”が目指すものは、「あんじゃね(=長野県の方言で「案ずることはない」)な社会」をつくること。そんな社会を築くためには、どんな状況でも周囲と協調して自ら責任ある行動を取れるように「ひとねる(=長野県の方言で「人を育てる」)こと」が基盤だと考えています。つまり私たちは自律の人づくりの団体。それを実現するために実施しているのが今の教育プログラムです。

僕が最も大切にしていることは、子どもの力、地域の力を信じること。例えば、子どもには無理、危険だからと火や刃物を触らせない大人が多いですが、危ないことを知らないまま生きていく方が危ないと思いませんか。子どもは思い通りにならないことを乗り越えようとする力を持っているんです。そのことを中途半端に考えず、子どもの力を信じることをとことん貫いていくことが何より大事。そして、大人から信じてもらった子供たちが次の時代を担っていくと信じています。

僕がこの泰阜村に来た頃は、地域の人々からこの活動が理解してもらえず、とても訝しがられていて、なかなか認めてもらえませんでした。ところが、1999年に当時の文部省が募集した長期自然体験キャンプの地域に泰阜村が選ばれ、村の人々と実行委員会を立ち上げることになりまして。実行委員長は頑固一徹のおやじで、ずっと意思疎通ができなかったのですが、その頑固おやじがキャンプを終えた子どもたちのバスを見送りながらこうつぶやいたんです。「辻くん、わしゃ生まれ変わったら教師になりたい」。聞けば、我が子や地域の子どもたちに村のいい所を教えてこなかったそうですが、「川が透き通って底まで見える!」「こんな星空、見たことない!」とキャンプの子どもたちが感動する声を聞くことで、「初めて村の素晴らしさに気がついた。だから教師になって村のいいところをいっぱい教えてやるんだ」と。この言葉にはとても感動し、改めて活動の意義を感じた瞬間でした。

これから実現したい夢は2つ。現在の国内留学は都会から農山漁村に留学へ来るものですが、今後は全国各地の小さな村や町同士で連携し、交換留学を行うこと。国に頼らず、信念ある学びのネットワークを今こそ構築すべきだと考えています。もう1つは、泰阜村に大学をつくること。10年ほど前からさまざまな大学で講師をしてきたこともあり、この地域が育んできた文化や歴史、風土、暮らしを、より多くの若者たちに伝えたいと感じてきたからです。東京や大阪ではなくても“いい教育”はできる。いつかそれを実証したいですね。

居心地のいい場所から
一歩踏み出す
自主的なチャレンジ
こそが宝に

大学の講義でもよく学生たちに伝えるのは「Cゾーン(Comfort Zone)を超えろ」ということ。居心地のいい場所に居続けては成長できないという意味です。Cゾーンの外側にある思い通りにならないこと、結果が予測できないこと、不安なことが渦巻く世界に一歩足を踏み出し、自主的にチャレンジしてこそ、質の高い楽しさ、学びが得られると思うんです。

北大では、体育の教え方を研究する「体育方法論」のゼミで今の仕事をする上で基軸となる考えを学びました。「なぜ体育が嫌いな子どもがいるのか」という問題意識について、現代の教育は「より高く、速く」が評価基準なので、できない子どもたちが体育を嫌いになるのは当然だという解釈から、できたかできなかったかではなく、体を動かす喜びをいかに伝えられるかに力点を置くという弱者に寄り添う視点です。これがスーッと胸に入り込み、今も自分の基軸となっています。世の中は長いものに巻かれろ的な風潮がありますが、僕は北大生にこそ「小さくてもキラリと光る」自分の持論を見つけてほしいと思います。また、クラーク博士の「Be gentleman」という言葉は、僕は高度な自律感をいかに持てるかという意味だと捉えているのですが、北大はまさに逆境にこそ発揮できる力を教えてくれる場だと思っています。“混沌としたるつぼ”のような場所から生まれるパワーは凄まじいですから。ブーメランは投げる力が弱いと途中で落ちてしまいますが、力いっぱい投げると、元の位置に戻るか、どこか違う場所に着地するもの。人間も同じで、力強く送り出してもらうと、いろんな場所であらゆるものを吸収して返ってきます。僕は北大に力強く投げ出してもらったブーメラン。偉大な投げ手に感謝しています。

NPO法人グリーンウッド自然体験教育センター代表理事 辻 英之さん(1993年 教育学部卒業)
NPO法人グリーンウッド自然体験教育センター代表理事
辻 英之さん
(1993年 教育学部卒業)
1970年福井県生まれ。大学卒業と同時に当時任意団体であったグリーンウッドの活動に参画。2009年NPO法人グリーンウッド自然体験教育センター代表理事就任(現職)。村の暮らしの文化に内在する教育力を生かした独自の教育活動を進める傍ら、国や自治体をはじめとする各種委員や国立?私立のさまざまな大学での非常勤講師などを務め、全国各地を精力的に飛び回っている。