365体育投注_365体育直播-竞猜网投

图片
新着情報

ホーム > プレスリリース(研究発表) > 膵臓癌はなぜ初期診断時に既に手遅れなのか~癌免疫療法改善策の分子メカニズムの解明~(医学研究院 教授 佐邊壽孝)

膵臓癌はなぜ初期診断時に既に手遅れなのか~癌免疫療法改善策の分子メカニズムの解明~(医学研究院 教授 佐邊壽孝)

2019年8月13日

ポイント

●難治性癌である膵臓癌において,「発癌」と「浸潤や転移」が同時に進行するメカニズムを解明。
●モデルマウスを用いた動物実験により,ARF6経路が癌免疫回避に大きく関与することを発見。
●遺伝子変異がもたらすARF6経路メカニズムの解明により,今後の癌免疫治療の進展が期待。

概要

北海道大学大学院医学研究院分子生物学教室の佐邊壽孝教授,消化器外科学教室 II の平野 聡教授らの研究グループは,膵臓癌(膵癌)の悪性度進展と癌免疫回避に関する分子メカニズムの解明に成功しました。現在,癌免疫療法は大きな脚光を浴びていますが,その適用範囲や効果はまだまだ限定的です。今回の研究成果は,膵癌だけでなく,多くの癌に対する免疫治療改善に大きく貢献する分子的基盤を示しています。

膵癌は,見つかった時には既に局所浸潤や転移を起こしていることが多く,5年生存率は 10% 以下の難治性癌です。佐邊教授らの研究グループはこれまで癌の浸潤転移や悪性度を駆動する分子メカニズムに関する研究を行っており,その成果として,ARF6と呼ばれるタンパク質とその関連因子群が形成するシグナル経路を明らかにしています。この経路の成り立ちや活性に関する分子生物学的研究を推し進めた結果,今回,KRAS TP53 と呼ばれる2つの代表的癌遺伝子変異が関与していることを突き止めました。これらの2つの癌遺伝子変異は,多くの膵癌で同時に見つかることが知られています。今回の研究成果は,多くの膵癌において「発癌」と「浸潤や転移」が同時に進行することを明らかにし,このような膵癌特有の性質がその治療を困難にしていることを示しています。

膵癌に関するマウスモデルは世界中で使われており,このモデルは膵臓の KRAS と TP53 の両遺伝子に変異を有し,KPC マウスと呼ばれます。今回,このマウスモデルを使って,KPC 膵癌細胞は ARF6 経路を介して浸潤?転移を起こしていること,及び ARF6 経路が癌免疫回避の根本であることを明らかにしました。このことは,KRAS と TP53 の変異が同時に起こることが癌の免疫回避に大きく関与することを示しています。ARF6 経路の活性化には特定の代謝活性が必須であることも明らかにし, この代謝経路をはじめ,幾つかの異なった分子標的の阻害によって癌細胞の免疫回避能を著しく低下させることが可能であることも実験的に立証しました。

本研究は,文部科学省(新学術研究),科学研究費補助金(基盤研究),国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED),上原記念生命科学財団,鈴木謙三記念医科学応用研究財団,住友財団基礎科学研究助成,住友電工グループ社会貢献基金,寿原記念財団,小野がん研究助成基金などからの支援を受けて行われました。

 なお,本研究成果は,米国東部時間 2019 年 8 月 5 日(月)の週公開のProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 誌にされました。

 詳細はこちら