2020年11月2日
ポイント
●室温において過去最高の熱電変換性能指数ZT=0.11を示す層状コバルト酸化物を実現。
●層間イオンを重くすることで,電気特性を損なわずに低熱伝導率化することに成功。
●安定で実用的な熱電変換材料の実現に大きな期待。
概要
北海道大学電子科学研究所の張 雨橋外国人客員研究員(JSPS外国人特別研究員)と太田裕道教授らの研究グループは,室温において過去最高の熱電変換性能指数ZT=0.11を示す層状コバルト酸化物を実現しました。
熱電変換は,工場や自動車から排出される廃熱を再資源化する技術として注目されています。熱電材料として,PbTeなどの金属カルコゲン化物が知られていますが,熱的?化学的安定性や,毒性があるという問題があり,大規模な実用化に至っていません。金属カルコゲン化物と比較して,多くの金属酸化物は高温?空気中においても安定していることから,日本では25年ほど前から熱電材料として研究されてきました。熱電材料の変換性能は,性能指数ZT[=(熱電能)2×(導電率)×(絶対温度)÷(熱伝導率)]で表され,金属カルコゲン化物の代表であるp型PbTeの室温におけるZTは約0.1です。金属酸化物の中でも,ナトリウムイオンを層間に含む層状コバルト酸化物は,熱電能が大きく,導電率も高いことから,実用的な熱電材料として期待されましたが,熱伝導率が高いため,室温のZTは0.03程度にとどまっていました。研究グループは,層状コバルト酸化物のナトリウムイオンを様々な金属イオンに置き換えて,金属イオン層が重くなるにつれて,電気的な特性は変化せず,熱伝導率だけが減少することを突き止め,最終的に重いバリウムイオンに置き換えたとき,室温でZTが0.11に達することを発見しました。一般に,性能指数ZTは高温になるほど上昇することから,安定で実用的な熱電変換材料の実現が期待されます。
なお,本研究成果は,2020年10月13日(火)公開のJournal of Materials Chemistry A誌にオンライン掲載されました。
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