2021年1月19日
北海道大学
東京工業大学
日本モンキーセンター
ポイント
●国際共同ゲノムプロジェクトにより「卵を産む哺乳類」のゲノムの特徴を解読。
●嗅覚とフェロモンに関する遺伝子がカモノハシとハリモグラで大きく異なることを発見。
●哺乳類がゲノムレベルでどのように進化したかを探る新たな手がかりとなることに期待。
概要
北海道大学大学院地球環境科学研究院の早川卓志助教,東京工業大学生命理工学院の二階堂雅人准教授,株式会社digzymeの鈴木彦有博士,アデレード大学のFrank Grutzner教授,コペンハーゲン大学のYang Zhou研究員,Guojie Zhang教授らの国際共同研究グループは,『単孔類』と呼ばれる「卵を産む哺乳類」であるカモノハシとハリモグラの高精度な全ゲノム塩基配列の決定に成功し,単孔類がどのように進化しているかを明らかにしました。
カモノハシはオーストラリア東部の河川や湖沼に,ハリモグラはオーストラリア全土とパプア島の陸地に生息しています。単孔類はカモノハシとハリモグラの2グループしかおらず,どのように哺乳類が卵を産む爬虫類的な祖先から進化したのかを教えてくれる貴重な存在です。
早川助教ら日本グループは,カモノハシとハリモグラの化学感覚(味覚,嗅覚など)の進化に注目しました。その結果,両種は哺乳類全体でも特別な進化をしており,明確な違いがありました。具体的には,①ハリモグラは苦味受容体遺伝子がとても少ないこと,②一方でハリモグラは嗅覚受容体遺伝子を沢山持つこと,③カモノハシはフェロモン受容体遺伝子を沢山持つことがわかりました。
本研究成果はハリモグラが餌となるアリやシロアリが発する匂いを頼りに餌を探していることや,水中生活者のカモノハシがフェロモンを用いて効率よく仲間とのコミュニケーションや繁殖をしている可能性を示しており,哺乳類のゲノムと生態を結びつける重要な知見です。
なお,本研究成果は,2021年1月6日(水)公開のNature誌にオンライン掲載されました。
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