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Biglycan阻害による癌微小環境の正常化と治療効果増強を明らかに~免疫療法や抗がん剤の治療効果増強と副作用低減が期待~(歯学研究院 教授 樋田京子)

2021年5月10日

ポイント

●Biglycanの標的によって腫瘍血管が正常化し,抗癌剤の送達性が改善することを解明。
●癌線維化の抑制と免疫細胞動員の改善をもたらす新しい標的分子を発見。
●免疫療法や抗癌剤の治療効果の増強と副作用の低減が期待。

概要

北海道大学大学院歯学研究院の樋田京子教授,間石奈湖助教,北海道大学大学院医学院博士課程のLi Cong氏,北海道大学病院の樋田泰浩准教授とアメリカ国立衛生研究所のMarian F. Young博士らの研究グループは,糖タンパクBiglycanの阻害により癌微小環境が正常化され抗癌剤や免疫細胞の治療効果が改善することを初めて明らかにしました。

癌組織における血管は,未熟な構造をしているため,血管を介して運ばれる抗癌剤が血管外に漏れてしまい効果が不十分となることや,過度な線維化が起きているため,癌細胞を攻撃する免疫細胞が十分に遊走できないことが知られています。このことは免疫療法などの癌治療の奏功性低下に繋がるため,解決すべき課題の一つです。

そこで研究グループは腫瘍血管内皮細胞をはじめとする間質に発現しているBiglycanを抑制すると,血管が正常化し抗癌剤の送達性が改善し,癌の線維化の抑制によって免疫細胞の浸潤が増加することを明らかにしました。マウスの腫瘍モデルにおいてBiglycan阻害により抗癌剤治療効果が増強されたことからBiglycanは新たな癌治療の標的となることが期待されます。

なお,本研究成果は,2021年510日(月)公開のBreast Cancer Research誌にオンライン掲載されました。

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本研究成果の概要図