【Academic Fantasista 2022】札幌南高校にて、6名の研究者が出張講義を実施

10月21日(金)札幌南高校にて、6名の研究者が講義を実施しました。

「究極的共有結合への挑戦」理学研究院 准教授 石垣 侑祐

有機化学の基礎となる炭素-炭素共有結合について研究を進める石垣さん。講義では、有機化学の世界で基準とされる?(オングストローム)について説明し、炭素-炭素結合の限界といわれた1.8 ?より長い結合を実験的に証明した自身の研究成果について解説しました。研究によって常識を打ち破り、未知の性質を発見することの楽しさと有機化合物の可能性を生徒たちへ伝えました。生徒からは「限界に挑戦する取り組みがとても面白かった」「中学?高校と習ってきた化学の裏側に、とても深い世界があることを知り、わくわくした」「世界一を目指すという目標設定に憧れた」などの声が寄せられ、化学への興味が深まるだけではなく、大学での研究にも関心が高まる講義となりました。

結合を伸ばすことで新しい特性を発見できたと話す石垣准教授結合を伸ばすことで新しい特性を発見できたと話す石垣准教授

「蛋白質とあなたの健康?その深い深い関わり」先端生命科学研究院 教授 相沢 智康

相沢さんはタンパク質の機能や構造を調べ、研究を続けています。講義では、タンパク質は人間にとって最も大事な分子の一つであると話しました。人間が持つ約2万種類の蛋白質の設計図(遺伝子)が書き込まれたゲノムについて、「ゲノムマップ」(文部科学省発行)を使って解説した相沢教授。遺伝子組み換え技術を用い人工的に作り出したタンパク質の、未知の機能や構造を調べることで、医療や人々の生活に応用できるようにしたいと話しました。「身近にあるタンパク質を様々な視点で考え、どれほど重要なのかを知ることができ、大変興味深かった」などの声の他に、「講義に引き込まれていくような教え方で大変面白かった」「講義の進め方が面白く、また講義を受けたいと思った」などの声もあり、講義や研究の楽しさ、大学への興味や関心が高まった授業となりました。

生徒たちにタンパク質とは何かを説明する相沢教授生徒たちにタンパク質とは何かを説明する相沢教授

「動くがんを狙い撃つ放射線治療技術」工学研究院 准教授 宮本 直樹

工学研究院の教員として放射線の研究を行う宮本さんは、病院で医学物理士として勤務し、がん治療に携わっています。講義では一般的ながん治療や放射線治療について説明し、医学物理士と大学教員の仕事について説明しました。陽子線治療の課題となっている、動くがんへの照射(スポットスキャニング)について研究を進める宮本さん。新しい技術を使い、研究?開発をすることの楽しさを生徒たちへ伝えました。研究内容の他にも、大学教員の仕事や、工学部と北大病院との連携についても説明した宮本さん。生徒からは「医学物理士という存在を初めて知り、医学部出身ではなくても医療に携われるのだと知った」「工学の最新技術による医療の発展などを知ることができ、大変興味深かった」などの声が寄せられ、異分野との連携や大学教員としての日々にも、興味?関心を深める事が出来ました。

講義後、生徒からの質問に答える宮本准教授講義後、生徒からの質問に答える宮本准教授

「脳を治す再生医療最前線」医学研究院 助教 川堀 真人

重い後遺症を引き起こすことのある脳卒中。後遺症に苦しむ患者を助けるために、川堀さんは患者の間葉系幹細胞を体外で培養して直接脳に注入し、脳の傷ついたところを治す再生医療の研究を続けています。講義では、治らないと言われてきた脳の病気を治る病気にしたいと生徒たちへ話し、大学で行っている治験やその認可へ向けたステップ、研究に係る様々な業種についても解説しました。生徒からは「医師が手術や診療だけではなく、研究にも精力的に取り組んでいることを知り興味を持った」「医学の可能性に関心を持った」等の声が多く寄せられ、医学への興味がより深まる講義となりました。

再生医療について解説する川堀助教再生医療について解説する川堀助教

「夢のエネルギー人工光合成の実現に向けて」電子科学研究所 特任教授 三澤 弘明

金属ナノ粒子と半導体を組み合わせた人工光合成の研究に取り組み、従来の2倍以上の人工光合成の反応効率増大に成功した三澤さん。生徒たちに、限りある地下資源とCO2による温暖化の影響について説明し、人工光合成でつくられたエネルギーが社会実装できるよう研究を続けている、と話しました。「エネルギーがなければ生活の質が下がる。地下資源のない日本では、いかに効率よく再生エネルギーを作るかが重要な研究課題だ」と語りました。生徒からは「普段、エネルギーについて考える機会が少ないので、今後の課題や既存のエネルギーに代わる新しい科学技術について知ることができた」「難しいイメージがあったが、自分たちの身近にありとても面白い分野なのだと思った」との声が寄せられました。

生徒たちへエネルギーの選択肢が広げられるよう研究してほしいと話す三澤教授生徒たちへエネルギーの選択肢が広げられるよう研究してほしいと話す三澤特任教授

「森林生態系の健康診断!」北方生物圏フィールド科学センター 苫小牧研究林 教授 中村 誠宏

苫小牧研究林長を務める中村さんは、苫小牧研究林を巨大な実験所と考え、地球温暖化が森に与える影響について様々な研究を続けています。講義では、調査の際に出会った野生動物の姿や、温暖化を再現した様々な実験の様子を紹介し、「多様性があり、恒常性を維持できる森が、温暖化による食害や災害に左右されにくい森の姿」だと、生徒たちへ解説しました。多くの写真を見せながら、森での研究の様子や出会う動物たちの写真を紹介し、生徒たちの森への関心、研究への興味が引き出されました。「感覚的だった森林に対する考えが、スライドや図を多く使い科学的に説明され、大変興味深かった」「長い時間を掛けて研究を行い、推測もする方法がとても面白かった」との声が生徒から寄せられ、温暖化や森林再生に対する関心が高まった授業となりました。

多様性のある森が災害や温暖化に強いと説明する中村教授多様性のある森が災害や温暖化に強いと説明する中村教授

日時:2022年10月21日(金)14:15-16:05
会場:札幌南高等学校
参加生徒:1年生 約190名

(社会共創部広報課)


Academic Fantasistaとは?

北海道大学の研究者が知の最前線を出張講義や現場体験を通して高校生などに伝える事業、「アカデミックファンタジスタ(Academic Fantasista)」。内閣府が推進する「国民との科学?技術対話」の一環として、北海道新聞社の協力のもと2012年から継続的に実施しています。今年度はコロナ対策を十分に行って、札幌近郊の高校等を対象に22名の教員が講義を実施しています。22年度の参加教員はこちら

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